「比嘉慂/砂の剣」
・出版社 小学館・全1巻(A5版) 青林工藝舎・全1巻(B6版)
・出版年 1995年 2010年
・入手度 容易~普通
・ジャンル 戦争 日本史
・おすすめ度 ★★★☆ 比嘉慂初期作品集。
「この戦争もいつかは終わる。次の世の中がどんな世界になるのか見届けたい。」 太平洋戦争末期、沖縄。悲惨すぎる現実を題材に、抑制された展開でその奥にある真実を捉え、比嘉慂の原点となった幻のデビュー作品集。
「カジムヌガタイ-風が語る沖縄戦-」を読んで他の作品を探していた時見つけたのが本作。初期作品集で、数々の短編が収録。カジムヌガタイ同様に重厚な人間ドラマが描かれております。
「砂の剣」、「砂の落日」、「母について」、「砂の呼声」、「砂の兵士」、「学舎」、を収録。更に小学館版には「御願さびら」、青林工藝舎には「土盗り」が収録されております。
「砂の剣」 名目は防衛だが軍隊がいることは敵軍の目標になるという事を意味していた・・・
「砂の落日」 山の部隊は降伏を拒否し、敵前逃亡した日本兵を殺したりと、身内である日本人に当たっていた・・・本作の中で一番読み応えのある作品。
「母について」 乳飲み子と、子供3人をかかえ、防空壕から墓の穴まで、戦火から逃げ続けた一人の母親の物語。著者の実母の話。
「砂の呼声」 洞窟などに立てこもる、日本兵や民間人に降伏を勧告するが・・・
正直読んで楽しい作品ではないですが、読んで感じる事は色々あると思います。どちらかというと目を背けたくなるような出来事が描かれておりますが、それが実際に沖縄で起こっていたことだということが一番厳しい現実です。
近年、好戦的な人が増えましたが、戦場からの距離が遠くなるほど人は好戦的になるそうです。戦場えの距離もですが、時間という距離が遠くなったからなのだろうか?と思う時があるのですが、70年前に何が起こっていたのか?は忘れてはいけないと思うばかりです。